ぽっかり時間が出来てしまって、
久しぶりに上野から谷中あたりを散歩することにしました。
御徒町の超あやしい純喫茶でくつろいだ後、
大黒様の寺院に手を合わせに向かいました。
もう夕方の5時をまわったところで、
遅くにごめんなさい、とお詫びし、感謝を念じました。
私が帰るとき、ご住職の奥様らしき方が、
お手水の所を片付けていらして、
「お気をつけて」と声をかけてくださいました。
私は、ありがとうございます、と返事をして、
門の所でお寺に向かいあらためて一礼したら、
奥様がまた話しかけてくださいました。
「この辺はね、夜になると、キツネやハクビシンが出るのよ。
だから、お手水の所にシートをかぶせてしまうの」
「ハクビシン?!へえ~!」と、
私は目を丸くしたのですが、
何だかふと、
この奥様は私をハクビシンの化身とでも疑っているのではないか?
秋の薄暗い夕暮れ時にお参りに来てしまって、
妖怪かハクビシンかと、疑われてもおかしくないのでは?
などど、んなわけないのに半ば動揺しうろたえてしまいました。
「ハクビシン?へえ~!」と驚いた時点で、
その言い方がわざとらしいように自分で思えて、
私はニンゲンですよ?ハクビシンちがいますよ?と、
必死で弁解しているようにも思えて、
私はそれこそ自らハクビシンであるとを認めざるを得ない、
窮地に立たされたような妙な感覚に襲われました。
(中島敦の、山月記のトラのような感覚とでも申しましょうか、、)
その後すぐお寺の門扉は閉められ、
それがまるで締め出されたような感覚として残り、
ハクビシン化身疑惑の空想は、夕刻の薄暗さと相まって、
私の中でクライマックスを迎えるのでした。
谷中はお寺がたくさんあって、なんだか落ち着きます。
だけども夕暮れ時は・・昼と夜の境目は、
なにやら異界の出入り口とでも申しましょうか。
化かされませんように。
次回はもっと早い時間に参ります。
どろん