『旅の思い出』oil, cotten on panel.2026’

2026/09/02

言い訳を探す

 年末の個展に向けて、

私は言い訳を探している。

「なぜ絵が変わったのか?」

この問い、

手短に答えられそうもない。

(説明したくないを許してくれるだろうか)



頭で描くのをやめてみた。

ここに青、ここに線。

そういう「思いつき」を頼りに描いた。


変な絵になった。

下手な絵になった。

昔描いていた絵に少し戻った。


困ったと思った。

(こんな絵許される?)

だが、腹の中では満足。

そういう感覚があった。


去年の暮れに、

深く潜ってしまう体験をした。

(シャドーワークとか、おそらくそれに近い)

「根源的なもの」に触れた。

生と死の先、もっと大いなるもの。

タオ的なものかもしれない。

わからない。

そこで拾ってきたイメージは、

埴輪とか、漢字とか、線、糸、

群衆、踊り、祭り、巫女さん、

陶器のような質感、

何者か。


絵肌を思い出した。

私の好きなマチエール。


子どもの頃の変なポーズ。


古い土地。

懐かしく怖い昔の町。


なぜ絵が変わったのか?

「少女の先に、何者かがいた。

その者を描いた。」


これでいいだろうか。

(わからない)

イマジナリー

 私たちは急にいなくなる。

だから、会いたい人には会っておこうと思う。

だけど、相手は私に会いたいと思ってないかも知れないので、

イマジナリー友だちにして、

心の奥で会う。


どこで食事しようか、

どんな会話をするか、

考える。

地図アプリで、店を探す。

安過ぎても、高過ぎてもいけない。

落ち着く店がいい。

老舗のお蕎麦屋さんとかいいかも。

近況をどこまで話そうか。

つまらないグチは話さないようにしよう。


歳とると、思い出が貴重になる。

楽しかった時間。

安いワインの銘柄。

バカ話。


会いたいけど、もうあの楽しさは

再現できないだろうな。

また会ったら楽しいかな。

楽しくなくても、

しんだら会えないしな。

生きてるうちに会いたいよな。

またバカ話しようぜ。

2026/07/25

にぎりめし

 時々無性におにぎりが食べたくなる。

裸の大将というドラマで、

山下清先生の

ぼ、ぼ、ぼくはおにぎりが食べたいんだな

という台詞がある。


じぶんがおにぎりを食べる時、

その台詞が浮かぶ。


画家がおにぎり食べてるよ、

と思う。


ただそれだけだ。





2026/07/19

15のきみへ


15才の自分に、今の自分を見せてあげたい。

そう言えるひとは、

世の中を上手く泳いでいるひとだろう。

納得して生きているひとだろう。

ささやかな成功をしたひとだろう。


15才の私に、今の自分を誇れるだろうか。


誇れない。

ぶっちぎりで誇れない。

胸を張って会いに行けない。


なんなら会って失望させて、

きみはここでこういうミスをしがちだからと、

違う世界線をご案内してあげたい。


こだわるなと、


こだわると、間違えるよ、と。

(きっと今も間違えてるけど。)



そう忠告しても、

きっと私はここに辿り着く。

(性ですから、サガ)


きみの人生は、

なかなかに味わい深いよ。



友人のお子さんが15才になったと聞いた。

15の私が目にかすんだ。





2026/06/28

日曜日サバイバー

 日曜日に街に出かけた。

印刷用の紙とインクを急ぎで調達したかったから。

ポチッとな、しなかった。


毎度思うのだが、

私のような者は日曜日に出掛けてはいけない。

日曜日の街はサバイバル過ぎる。

安息ならない日だ。


人は溢れ、殺気立ち、

店員さんは疲れ果て目は虚(うつろ)。

長居は無用と早々に用を済ませたら、

コーヒーくらいは飲みたくなる。

ドーナツくらいは食べたくなる。


後ろの席の女たちは小鳥のように喋り続ける。

話しのスピード感に圧倒される。

学生たちはドーナツ一個で席を取り、

勉強しているのか。

勉強は感心だが、

店の立場になると泣いてしまう。


…私のような豆腐は、

日曜日に出掛けてはならない。

いちいち刺さっていては、

身が持たぬ。


生成AIさんのおかげで、

私たちは利口になったような気になっているが、

私たちは、昔からそう変わりないのではないか。

愛とかお金とか健康とか欲しがって、

満たされず、ごまかしながら。

などと、ぼんやり思った。


夕方、

少し街の気が落ちついた気がした。


帰ったら、

静かに仕事の続きをしよう。


絵の続きも。

最近は変な絵だけど、育てていこう。




2026/06/24

グッバイやほー


やほーアプリを消した。

週刊誌みたいな記事が際限なく流れてきて、

気が滅入るから。


すると外で何が起こっているか、

まるで知らなくなる。


サッカー日本代表選手たちの活躍も、

音楽室の火事も、

何も知らなかった。


今もっとも身近なニュースは、

猫の失踪だ。

どんな感情でいたらいいのか。

今は喪失感の表面に触れている。





2026/06/20

箱根

 温泉に行った。

山に囲まれて風呂に浸かった。

言葉が要らなくなった。


木々があって、森になってて、

山が見えて、鳥が飛んでる。

虫が風呂に浮いていて、

夏至の前の

ちょうどいい風が漂ってる。


私は自分の体調を気にしていた。

けど大丈夫だった。


無事に風呂に浸かった。

癒されたとか、そういうのではなくて、

自然と一体になる感覚があったから、

この旅は大成功だ。


楽しかった。