うた会、2023 春、旅の前に
門倉直子
よみがえる
サザコーヒーの香りかな
勝田の思い出
絵画と私と
不忍の
ビルの隙間にサンセット
3ヶ月待ち
十三やの櫛
御徒町へ
指輪のサイズお直しに
上野のお山
ひとり歩けば
冬越えて
ざらりと荒れた指先を
やさしく労わるソンバーユかな
夕焼けに
銀座のネオン眺めれば
私の個展など無かったかのように
友情と
恋の隙間ではしゃぐには
安いワインが丁度いいから
東京中を
歩いていたのはいつの日か
夜見世通りであなたを見つけた
神木に
見惚れてひとり根津神社
小宇宙に放り込まれる
返信を
くれないあなたは小さくて
恥をかくのは私ばかり
描いた画と
たっぷり見詰め合えるなら
その瞬間を宝と名付ん
ツキイチで
あしき心も絞り出す
よもぎに蒸されて
幾千の汗
描いた画を
ダンボール箱に詰め込んで
ビニール紐できゅっと結んで