ご存知の方も多いと思いますが、
「北京ちゃんぽん」で名高い
天津飯店は
以前は銀座に店があって、
私は
画廊まわりの帰りに、
自分の個展の帰りに、
たまに通っていました。
最初は羅針盤の画廊主に
「真っ赤なスープの
美味しいのを見つけた」と
連れて行ってもらったと記憶します。
サンドバックのように
ボコボコになった気分の時、
どろどろに疲れ果てた時や
元気になりたい時など
真っ赤なスープの北京ちゃんぽんを食べて、
精をつけていました。
北京ちゃんぽんは量が多いので
意を決して注文していました。
「よし、食べるぞ」と、
心を決めて入店していました。
真っ赤なスープにぞくぞくして
野菜と魚介類がいっぱいで
完食すると勇気が湧いてきました。
「私は北京ちゃんぽんを食べることが出来た。大丈夫だ。」と。
お腹いっぱいで
頭もぼわーんとして、
「なんとかなる」という
緩やかで前向きな気持ちが
押し寄せてきました。
お店の人のちょっと雑な接客も好きでした。
聞き取れない中国語も好きでした。
今にも崩れそうな、
銀座に似つかわしくない外観も
好きでした。
本当に世話になりました。
数年前に
銀座の店が無くなってしまい、
もう北京ちゃんぽんを食べられないのかと、
残念に思っておりましたが、
神田で店が再開されたと
最近知りました。
また北京ちゃんぽんに会える。
しかも神田って、
よく通る道からも近い。
通い始めた当時より
少しは知恵も付いて
おかげさまで美術の世界に
居座り続けておりますが、
「北京ちゃんぽんを食べるぞ」
っていうあの気持ちは
私の初心のひとつです。
(さあ、いつ食べに行こう)