うた会2023 4月の旅
門倉直子
クロネコに
作品託し見送れば
広くなった作業場で寝る
4度目の
新幹線はかがやいて
ちいさな画家は信州へ向かう
いくつかの
封印してた感情は
旅の途中でこわれて消えた
一瞬だけ
垣間見せてたあの表情(かお)が
あなたの本心と
確信している
コーヒーと
サンドイッチさえあれば
何でも出来ると
背もたれたおす
先に逝く
同い年のオレンジスターに
「ずるい」と思った
38才の吾
うたくらい
好きに詠みたい気持ちだけで
うたえるのは今だけだから
あの山を
眺めて育った人たちと
川見て育った
わたしが出会う
恥ずかしい
なんて気持ちは消え失せて
溢れてくるは
幾千の恋
じゃこと大葉の
パスタ美味しく出来たから
帰ってきたら作ってやろう
白い壁に
私が描いたはずの画は
他人の顔して手を離れてく
準備して
展示して見せてまた描いて
生きて死ぬのを繰り返すように
またひとつ
物語りの終焉を
迎えるけれどやり残しだらけ
意外にも
こぶし効かせて描いた画は
展示してみると拍子抜ける
次に描く
画の大きさやイメージを
思い描いて途方に暮れる