画廊バナナムーンで開催される個展の展示作業をするために、信州安曇野に行ってまいりました。
今回の個展は、1階の広いメインスペースと小部屋、2階の展示室、この3つの部屋で構成するボリューミーな内容です。
お引き受けするのに戸惑いもありましたが、じぶんの力量を知る良い機会と、開催の運びとなりました。
2022年9月には、バナナムーンの2階展示室で個展をさせて頂きましたので、そこから半年の準備期間を頂きました。
さすがにすべて新作、とはいきませんでしたが、発表しそびれていた油彩を加筆するなどして、新旧30点余りを展示することにしました。
メインは100号3点、これは制作時間や制作場所、搬送作業などを考慮して、アクリル絵の具で制作することにしました。やや消極的理由が含まれていることは否めませんが、久々にキャンバス布を使用したこと、新しい画材に挑戦したことは、ときめきを呼び起こす貴重な体験となりました。
制作中は、私の手に負えないようなエネルギーをどこからかお借りして描いているような体感すらありました。
「あらがえぬエネルギーが心身を貫く」というテーマの部屋としました。
第2室のメイン作品は60号のアクリル画です。
100号の「動」に対して「静」のイメージで制作しました。静かに対峙するイメージ、そしてここは「許される場所」。見つめ合う体験をして頂きたい部屋です。
2024年のために制作していた50号油彩の新作は、搬入直前になって展示することを決めました。2階展示室の正面の壁に展示するイメージがふと浮んだからです。
作品のタイトルと部屋のテーマは、個展のサブタイトルをそのまま引用しました。
余談ですが「あそび」の作品、ドローイングの小品も搬入こそしましたが、個展全体のバランスを崩しかねないというアドバイスを頂き、引っ込めました。(これは、私の甘さの表れでした。作品は堂々と勝負する、それで良いのです)
おおよそ大作はイメージ通りの展示になりましたが、中品〜小品は幾つかの可能性を探りながら展示しました。非常に微細で集中力のいる仕事でした。最終的には部屋ごとのテーマが立ち上がってくる構成になったと感じます。
作品どうしのストーリーが共鳴する感覚でしょうか。
画廊の方のアドバイスは、とても勉強になりました。
第1室:
あらがえぬエネルギーが心身を貫く
第2室:
私たちは静かに見つめ合えるだろうか
第3室:
ひみつの部屋で光輝け
たくさんのお客様に見て頂きたい反面、東京の画廊のようにはいかないという現実もあります。
画廊の立ち位置、コンセプトもそれぞれ違います。
作品は残りますが、展示自体は会期が終われば撤収し、消えてしまいます。
それでも時間をかけてエネルギーを費やし個展をする意味は、この機会に作品と出会ってくれた方々の心に何かしら作用するかも知れない奇跡と、これから制作する作品のための鍛錬でしょうか。
あるいは意味など考えず、ただそこに出現したことそのものが大事なのかもしれません。それは「生まれたい」というシンプルな意思に他なりません。
展示作業はたった一日中の作業でしたが、私の頭の中はもう真っ白、フリーズ。それでもしばらく眺めては展示を修正して…ひと通り作業は終えたものの、冷静に展示を観ることなく、微調整は画廊の方にお任せをしてタイムオーバー。
画廊を後にしました。
その夜泊まった宿は、何となく怖いような寂しいような、いたって普通なような…脳は興奮状態、疲れもあって半べそをかくような心細い気分で床につきました。
ところが、なんと翌朝にサプライズ。
室の窓から虹が見えました。
山のふもとから立ち上がり力強く弧を描く虹は、まるで予祝のようで、晴れやかな気分になりました。
そんなことあり得る⁈と。
2023年の個展が始まります。
どうぞご覧ください。
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門倉直子 展
-ひみつの部屋で光輝け-
2023’4.7(金)-5.7(日)
金土日13:00~17:00open
画廊バナナムーン
長野県安曇野市穂高有明3613-32
gallerybananamoon@gmail.com