浪人時代、予備校の講師から
「あんまり教えたくないんだけど」と
前置きされて、
「参考になるから」と教えてもらった
画家の名は、神田日勝でした。
高揚しました。
私は神田日勝がどんな画家で
どんな絵を描くのか調べるため、
池袋の大きな書店に足を運び、
美術書のコーナーで
「神田日勝」を探しました。
いくら探しても図録は無かったのですが
美術年鑑のような雑誌から
「神田日勝記念美術館」の存在を
探し当てました。
当時はインターネットが無かった(!)ので
手間を掛け時間を掛け、
本屋でそれを探し突き止めた瞬間は、
たいへんエキサイティングで
ドラマチックな体験でした。
神田日勝記念美術館の住所は北海道。
北海道に行きたい。
北斗星という夜行列車に乗って
北海道に行こう。
私は北海道に行く計画を立てました。
行けませんでした。
浪人生、お金も勇気も時間も無い、
と言い訳して、
思い切りのいい行動に出れない
小さな自分を少々情けなく感じました。
しかし浪人生、
図録を美術館から取り寄せることにしました。
美術館に電話を掛け、
図録を2冊取り寄せました。
少しだけ苦労して取り寄せたその図録は
私にとって秘宝。
衝撃を覚えました。
そして深く感動しました。
当時19か二十歳の私は、
先ずその技法にクギ付けになりました。
絵の具そのものが
モチーフの質感を表現する様子や、
鮮やかな青や赤の差し色の使い方、
ナイフの使い方や画面構成…。
穴のあくほど図録を眺め、
研究し真似をしました。
(もちろん馬ではなく人を描いていました…)
私にとっての神田日勝は
「浪人時代に出会って、
その技法に魅了され影響を受けた画家」
でしたが、
2020年6月。
東京に来てくれた神田日勝展を
ステーションギャラリーで拝見して、
認識が一変しました。
馬が描かれた作品を観て、
19歳の時分には感知出来なかった
とてつもない何かに圧倒されました。
当時も大好きだった馬の作品は、
迫力があり圧巻でした。
あの頃は
技法にばかり目が行っていましたが、
もっと深いところで、
この作品群に惹きつけられていたと
時を経て気付きました。
この時世、入場制限があり
チケットを事前予約せねばならず、
少々手間と時間を掛けて
ステーションギャラリーに
足を運びました。
東京で実物を観れたことに、
深く感謝しています。