前作「おいらの姉さん」シリーズは、遊郭を舞台に画かれた「浮世絵」から着想を得て描いた連作です。
その続編となる「七岡(ななおか)」シリーズは、吉原よりも庶民的な「岡場所」、根津遊郭などをイメージして描きました。
七岡屋(ななおかや)は、架空の女郎屋です。
実際に、千束や根津などを歩いてみて、岡場所を舞台にした方が、場所の空気、感触が掴みやすく、私の表現したいことに近づけると感じました。
史実を元にしていますが、フィクションによる描写です。
遊郭には禿(かむろ)と呼ばれる見習いの少女たちが居ます。
家が貧しいなどの理由で、女郎屋に身売りされてきたこどもたちです。悲しい気持ちや、家族のために、という自負もあったかもしれません。その過酷な世界で生き抜く中で、花魁の姉さんへの憧れ、羨望も芽生えたのでは、などとと空想します。
そういう「希望」の気持ちが無けれは、生き抜けなかったのではとも思います。
姉さんのお古の着物を着たり、髪型を工夫して優越してみたり、ささやかな喜びも描きたいと思いました。
性に対して今よりずっと解放的で寛容であった江戸の時代を垣間見ると、現代の私たちの抑圧を自覚します。(野性や暴力性、なども同じくです)
そして、今の私たちには持ち合わせていない「ある感覚」が、遊女や禿にはあったのではないかと推測します。
その感覚がどんなものであったかを想像しつつ、遊郭の「束の間の様子」を描きたいと思います。