2020/06/20

学生時代の挫折のこと



高校卒業の時、

美大芸大の全ての受験に落ちた私は

まったく自信を喪失していました。

 

それまでそこそこ、

それなりにやってきたので、

人生初の挫折に呆然としていました。

浪人するつもりがなかったので、

その状況を受け入れられず苦悩し、

ぼんやりと世界を漂っていましたが、

浪人生活は思いがけず楽しいものでした。

通っていた研究所(予備校)の仲間のおかげです。

そして受験絵画を頑張りました。

 

ひとつ技法を獲得すると得意な気になりました。

絵よりも、我が前に出るようになりました。

頑張ることに酔ってしまって、

作品がまったく見えなくなりました。

絵を描くじぶんはとても特別なのだと

勘違いをして、

謙虚さをすっかり失っていました。

 

冬を越え春を迎え、

芸大の合格発表を見に行って

自分の受験番号が掲示板に載ってないと分かった時、

とてつもない巨大な拳に

頭をぶん殴られたようでした。

現役時のそれとは比べ物にならない程、

強烈でした。

私は予備校の仲間と共に

呆然と立ちすくんでいました。

掲示板を何度見ても

じぶんの番号はありませんでした。

 

頑張って頑張って、クラッシュ。

 

私の中ですくすく育っていた傲慢な心は

「不合格」のおかげで打ち砕かれ、

再起不能なほど落ち込みました。

 

何も食べられなくなりました。

と思ったら、今度は過食。

太らない体質の私が太りました。

身体が重くずっしりと感じた時、

私ではなくなってしまう感覚、

身体を乗っ取られる感覚があり、

これはまずいと、

二浪することを受け入れ

再び受験絵画をがんばりました。

 

2年目ともなれば、

さすがに絵も上手くなってきましたが、

少々投げやりな気持ちもあり、

賭けのような受験を選択しました。

もう精神が追いつけなかった。

自分で選んだ道にもかかわらず、

受験絵画から解放されたかったのが

正直なところでした。

 

また春を迎えました。

私は「滑り止め」で受けていた

少人数の美術専門学校の入学式に

屈辱と安堵の気持ちで出席していました。

劣等感でいっぱいでした。

それを悟られたくなくて、

先生に笑顔で挨拶して校舎に入りました。

 

年下の同級生の無邪気さは、

私のアンビバレントな感情を刺激しました。

とても優しく接してもらえました。

「ふつうの学生」気分を味わいました。

 

私は在学中から作家活動を始めていました。

それが私の光でした。

画業が私を精神的に支える軸になりました。

 

しかしながら、

浪人時代に培われた私の生意気な態度は

優しい同級生らを傷つけ、

最終的に私は孤立しました。

当然の結果でしょう。

プライドばかり高くていやな奴と

誰が友達になるというのでしょう。

 

そのおかげか、

私の居場所は作家活動をすることで

獲得していくことになるのでした。

 

入学式の写真は笑顔。

卒業式の写真はブスッつら。

私のアンビバレントを

見事に表現してくれていました。

 

様々な挫折は、

現在の私につながる人生のスタートでした。

未熟さゆえの苦しみは、成長の苦しみと

今は見ることが出来ます。

ちゃんと過去になっていきます。

書いて「物語」にすることで清算できます。

 

 

新社会人編はまたいつの日にか。

社会人になってからのほうが

もっと大変だけど楽しいです。